ポリトロープその2


天文においてポリトロープとは、圧力と密度がポリトロピック関係を満たし力学平衡にある球対称な流体である。
一般に、圧力\(\,P\,\)と密度\(\,\rho\,\)の間に
\(\quad P=K\rho^{1+\frac{1}{N}}\quad\cdots\,\) (1)
の関係があるとき、この関係式をポリトロピックと呼ぶ。ここで\(\,N\,\)はポリトロピック指数、\(\,K\,\)は比例定数である。
熱力学では \(\,1+\dfrac{1}{N}=\gamma\,\) であるが、天文では後述の Lane-Emden 方程式の解法のために、この形の表記を行う。
また、断熱圧縮率(\(\,\Gamma_1\,\))を以下のような形で表す。
\(\quad\Gamma_1\equiv\,\left(\dfrac{\partial\ln P}{\partial\ln\rho}\right)_S=\left(\dfrac{\partial\ln P}{\partial\ln\rho}\right)_T\gamma\quad\cdots\,\) (2)
理想気体の場合\(\, (\partial\ln P/\partial\ln\rho)_T=1\,\)となるので、
\(\quad\Gamma_1=\gamma\equiv\,\dfrac{C_P}{C_V}\quad\cdots\,\) (3)
ポリトロピック指数と星の種類
・\(N=0\,\):密度一定のガス
・\(N=0.5\sim 1\,\):中性子星
・\(N=\frac{3}{2}\,\):非相対論的ガス球 白色矮星、ガス惑星 RGの核
・\(N=3\sim3.5\,\):相対論的ガス 放射優勢の太陽などの恒星
・\(N=5\,\):半径が無限大の星
・\(N=\infty\,\):等温のガス球

[1]状態方程式
粒子がエネルギー\(\,\epsilon\,\)、化学ポテンシャル\(\,\mu\,\)に存在する確率は分布関数
\(\quad f(\epsilon)=\dfrac{1}{\exp[(\epsilon-\mu)/k_BT]\pm1}\quad\cdots\)(4)
符号\(\,\pm\,\)は+がフェルミ粒子、-がボース粒子に対応する。
高温あるいは低密度で粒子の存在期待値が小さい場合、量子力学の効果が無視出来て
\(\quad f(\epsilon)=e^{\mu/k_BT}\,e^{-\epsilon/k_BT}\,\)と近似出来る。
マックスウェル・ボルツマン分布が成り立つ条件は\(\,e^{\mu/k_BT}\ll1\,(\mu<0\,)\,\)であり、理想気体の状態方程式が数密度が以下を充たす場合である。\(A_m\,\)を粒子当たりの平均分子量とすると
\(\quad n=\dfrac{\rho}{A_mM_u}\ll\dfrac{g(2\pi mk_BT)^{3/2}}{h^3}\quad\cdots\,\)(5)

[2]光子ガス
光子はスピン1のボース粒子でボース-アインシュタイン統計に従う。エネルギーを\(\epsilon\)とすると、\(\epsilon=pc\,,\quad v=c\,\)で統計的重みは\(\,g=2\)、光子数は保存されないので\(\mu=0\)である。これより放射の圧力とエネルギー密度は
\(\quad U_r=3P_r=aT^4\quad\cdots\,\) (6) ステファンボルツマンの式
放射の圧力(\(P_r\))の寄与の比を \(\,1-\beta\equiv P_r/P\,\)と表し、気体の比熱比を\(\,\gamma\,\)とすると、断熱指数は
\(\quad\Gamma_1=\dfrac{4}{3}+\dfrac{\beta(4-3\beta)(3\gamma-4)}{3\beta+36(\gamma-1)(1-\beta)}\quad\cdots\,\)(7)
と表せる。ガス圧が優勢の\(\,\beta=1\,\)の時は\(\,\Gamma_1=\gamma\,\)で、
放射優勢の極限\(\,\beta\to 0\,\)で\(\,\Gamma_1=4/3\,\)となる。

[3]電子縮退気体
化学ポテンシャル\(\,\mu\,\)と熱エネルギー\(\,k_BT\,\)との比として縮退パラメーター\(\,\Phi\,\)を定義する
\(\quad\Phi=\mu/k_BT\quad\cdots\,\)(8)
(5)式より縮退による理想気体からのズレは\(\,\Phi\simeq 0\,\)で現れるが、低温・高密度で\(\,\Phi\to\infty\,\)の極限で分布関数が階段関数で近似できる場合を完全縮退という。このときの化学ポテンシャルの最大値をフェルミエネルギー\(\,\epsilon_F\,\)、運動量をフェルミ運動量\(\,p_F\,\)という。
ここでフェルミモーメント\(\,p_F/m_ec=x_F\,\)とおくと、電子の数密度、圧力、運動エネルギー密度はそれぞれ
\(\quad n_e=\dfrac{8\pi}{h^3}\displaystyle\int_0^{p_F}\!p^2dp=\dfrac{8\pi}{3}\left(\dfrac{mc}{h}\right)^3x_F^3=Bx_F^3\quad\cdots\,\)(9)
\(\quad P_e=\dfrac{8\pi c}{3h^3}\displaystyle\int_0^{p_F}\!\dfrac{p^4dp}{\sqrt{p^2+m_e^2c^2}}=8A\!\displaystyle\int_0^{x_F}\!\dfrac{x^4\,dx}{\sqrt{1+x^2}}\cdots\,\)(10)
\(\quad U_e=\dfrac{8\pi}{h^3}\displaystyle\int_0^{p_F}(\sqrt{p^2c^2+m_e^2c^4}-m_ec^2)p^2dp\)
\(\qquad=\dfrac{8\pi m_e^4c^5}{h^3}\displaystyle\int_0^{x_F}\!(\sqrt{1+x^2}-1)x^2dx=Ag(x_F)\quad\cdots\,\)(11)
ここで、\(\,A\,,B\,\)はそれぞれ
\(\quad A\equiv\dfrac{\pi m_e^4c^5}{3h^3}=6.002\times10^{22}\)dyn cm\(^{-2}\)
\(\quad B\equiv\dfrac{8\pi}{3}\left(\dfrac{mc}{h}\right)^3=9.739\times10^5\)g cm\(^{-3}\)
また
\(\quad f(x)=8\displaystyle\int_0^x\!\dfrac{y^4\,dy}{\sqrt{1+y^2}}=\!x(2x^2-3)\sqrt{1+x^2}+3\sinh^{-1}x\)
\(\quad g(x)=24\displaystyle\int_0^x(\sqrt{1+y^2}-1)y^2\,dy\)
\(\qquad=3\{2x(x^2+1)^{3/2}-x\sqrt{x^2+1}-\sinh^{-1}x\}-8x^3\)
\(\qquad=8x^3(\sqrt{1+x^2}-1)-f(x)\)
のように定義されます。
\(\quad U_e=Ag(x_F)\,,\quad P_e=Af(x_F)\quad\)また、
\(\quad P=(\gamma-1)U\quad\) なので、電子ガスにおいて
\(\quad \gamma=\dfrac{f(x_F)}{g(x_F)}+1\quad\cdots\,\)(12)
と表すことが出来る。

図のように、\(p_F/m_ec=x_F\ll 1\,\)では、\(\gamma\to 5/3\,\)となり、
相対論的極限の \(x_F\gg 1\,\)では、\(\gamma\to 4/3\,\)となる。







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