「物理実験」カテゴリーアーカイブ

振り子の実験

1.経緯

私が通学(通ってはいないが)している放送大学のゼミで、自宅での実験を動画撮影して皆で共有するという企画があったので、振り子の実験をやってみました。
振り子は小学\(5\)年生用の実験セットをAmazonから仕入れました。
(「ふりこのはたらき」 \(730\)円)

2.実験

ひもの長さは\(30\)cmとして、振れ角測定用に角度を書いた紙を付けました。大きく振った位置から重りを降ろしました。
(\(2020.09.05\) 実施)
撮影は iPhone をそのままの設定で(\(30\)f)三脚無しで行いました。時間は約\(2\)分間でした。
動画は DropBox 経由で、Windows マシンに落としました。再生で簡単にコマ落としが出来、時間の表示が \(1/100\) 秒単位で出てくるので MovieMaker を使用しました。(最近は MovieMaker はサポートされていないようですね)

撮影した動画の抜粋


編集は mac の iMovie を使用した。縦のプロジェクトが作れないので、ビデオクリップで横にして、編集して、出来た動画を QuickTime のplayer で開いて、縦に変換した。.mov 型の動画になるので、vlc で .mp4 に変換した。
(このページでは動画のサイズが\(8\)Mb なので抜粋版をつくりました)

3.実験結果

動画をMovieMaker でコマ落とし再生して、最大振幅の角度と時間を記録したのが下図です。

動画が\(30\)fなので、時間刻みが\(1/30\)sec単位となり、グラフは階段状になるが、振れ角が大きいと周期が長いという結果となった。

4.検討1:振幅の小さい場合

糸の張力\(\,T\,\)、重力\(\,W\,\)の合力\(\,f^{\prime\prime}\)が重りに掛かる。
\(\quad W=mg\)
\(\quad f^{\prime\prime}=mg\sin\theta\)
円周方向の重りの動く長さを\(\,s\,\)とすると
\(\quad m\dfrac{d^2s}{dt^2}=-mg\sin\theta\)
\(\quad s=l\theta\,\)なので\(\quad\dfrac{d^2\theta}{dt^2}=-\dfrac{g}{l}\sin\theta\)
振幅が小さいときは
\(\quad\theta\approx\sin\theta\quad\)とすることが出来るので
\(\quad\dfrac{d^2\theta}{dt^2}=-\dfrac{g}{l}\theta\quad\)とすることが出来、次のような一般解が得られる。

\(\quad\theta=A\sin\sqrt{\dfrac{g}{l}}t+B\cos\sqrt{\dfrac{g}{l}}t\)
ここで初期条件として\(\quad t=0\quad d\theta/dt=0\quad\theta=\theta_0\quad\)とすると
\(\quad\theta=\theta_0\cos\sqrt{\dfrac{g}{l}}t\quad\)が得られる。
周波数\(\,f\,\)は\(\quad f=\dfrac{1}{2\pi}\sqrt{\dfrac{g}{l}}\quad\)となる。
周期\(\,T\,\)は\(\quad T=\dfrac{1}{f}=2\pi\sqrt{\dfrac{l}{g}}\quad\)である。
今回は紐の長さを\(\,30\,\)cm としたので、
\(\quad T=2\times 3.141593\times\sqrt{\dfrac{0.3}{9.80655}}=1.099..\,\)(s) となった。結果のグラフを見ると、振れ角\(20\,\)度以下ではほぼこの周期となっているようである。

5.検討2:振幅が大きい場合

エネルギー保存則を用いて、振幅の大きい振り子の運動を計算する。振り子の最下点を原点とし、振りだし高さを\(\,h_0\,\)、\(\Delta h\,\)だけ降りた点の円周方向の速度を\(\,v\,\)とすると
\(\quad\dfrac{1}{2}mv^2=mgl(\cos\theta-\cos\theta_0)\quad\)なので
\(\quad\therefore v=\sqrt{2gl(\cos\theta-\cos\theta_0)}\)
ここで、\(\,v=\dfrac{ds}{dt}=l\dfrac{d\theta}{dt}\quad\)なので
\(\quad l\dfrac{d\theta}{dt}=\sqrt{2gl(\cos\theta-\cos\theta_0)}\quad\)より
\(\quad dt=\sqrt{\dfrac{l}{2g}}\dfrac{d\theta}{\sqrt{\cos\theta-\cos\theta_0}}\)

これを積分すると周期を求めることが出来る。
\(\,t\,\)の積分範囲を\(\,4\,\)分の\(\,1\,\)周期とすると、\(\theta=0\,\to\,\theta_0\)
\(\displaystyle\int^{\frac{T}{4}}_0dt=\dfrac{T}{4}=\sqrt{\dfrac{l}{2g}}\displaystyle\int_0^{\theta_0}\dfrac{d\theta}{\sqrt{\cos\theta-\cos\theta_0}}\)
ここからの積分は振り子の計算その2を参考にしてください。
プロセスとしては\(\quad\sin\phi=\sin(\theta/2)/\sin(\theta_0/2)\quad\)とおいて、いくつかの計算を経て以下の積分となる。
\(\quad T=4\sqrt{\dfrac{l}{g}}\displaystyle\int_0^{\frac{\pi}{2}}\dfrac{d\phi}{\sqrt{1-\sin^2(\theta_0/2)\sin^2\phi}}\)
この積分は楕円積分と呼ばれる。

5.1 楕円積分の計算

楕円積分を参照のこと。
第1種の楕円積分は以下のような式となる。
\(\quad I=\displaystyle\int_0^{\frac{\pi}{2}}\dfrac{d\phi}{\sqrt{1-a^2\sin^2\phi}}=\dfrac{\pi}{2}\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}\left\{\dfrac{2n-1)!!}{2n!!}\right\}^2a^{2n}\)
ここで\(\quad n!!\quad\)は二重階乗である。
これより、\(\,T\quad\)は以下のようになる。
\(\quad T=4\sqrt{\dfrac{l}{g}}\displaystyle\int_0^{\frac{\pi}{2}}\frac{d\phi}{\sqrt{1-\sin^2(\theta_0/2)\sin^2\phi}}\)
\(\qquad=2\pi\sqrt{\dfrac{l}{g}}\displaystyle\sum_{n=0}^{\infty}\left\{\dfrac{(2n-1)!!}{2n!!}\right\}^2\left(\sin\dfrac{\theta_0}{2}\right)^{2n}\)
具体的な計算は\(\quad b=\sin\dfrac{\theta_0}{2}\quad\)とおいて、振り子の長さ\(\,l=0.3\,\)m を使うと
\(\quad T=2\pi\sqrt{\dfrac{l}{g}}\left\{1+\left(\dfrac{1}{2}\right)^2b^2+\left(\dfrac{1}{2}\dfrac{3}{4}\right)^2b^4+\left(\dfrac{1}{2}\dfrac{3}{4}\dfrac{5}{6}\right)^2b^6\right.\)
\(\qquad \left.+\left(\dfrac{1}{2}\dfrac{3}{4}\dfrac{5}{6}\dfrac{7}{8}\right)^2b^8+\left(\dfrac{1}{2}\dfrac{3}{4}\dfrac{5}{6}\dfrac{7}{8}\dfrac{9}{10}\right)^2b^{10}+\cdots\,\right\}\)
\(\qquad=1.099\times\left\{1+\dfrac{1}{4}b^2+\dfrac{9}{64}b^4+\dfrac{25}{256}b^6+\dfrac{1225}{16384}b^8\right.\)
\(\qquad\left.+\dfrac{3969}{65536}b^{10}+\dfrac{53361}{1048576}b^{12}+\cdots\,\right\}\)
この値と実験結果を併せて表示する。

測定データが \(\quad 1/30\,\)sec 単位であるが、まあ妥当な結果となったようである。

振り子の計算(その2)


エネルギー保存の法則から振り子の周期 \(T\) の式を求める。
振り子の支点より水平方向に \(\ x\ \)軸をとり、鉛直方向に \(\ y\ \)軸をとると、エネルギー保存則から、次式が成立する

\( \dfrac{1}{2}mv^2=mg\Delta h\quad\) (21)

ここで、\(\ v\ \)は重りが円周方向に移動する速度で、\(\Delta h\ \)は重りの落下距離である。ここで

\(\Delta h=l\cos\theta-l\cos\theta_0=l\ (\cos\theta-\cos\theta_0)\quad\) (22)
なので

\( \dfrac{1}{2}mv^2=mgl(\cos\theta-\cos\theta_0)\)
\( \therefore \ v=\sqrt{2gl(\cos\theta-\cos\theta_0)}\quad\) (23)

さらに

\( v=\dfrac{ds}{dt}=l\dfrac{d\theta}{dt}\quad\) (24)

なので、以下の式が得られる。

\( l\dfrac{d\theta}{dt}=\sqrt{2gl(\cos\theta-\cos\theta_0)}\quad\)(25)

\( dt=\dfrac{1}{\sqrt{2}\omega}\dfrac{d\theta}{\sqrt{\cos\theta-\cos\theta_0}}\quad\) (26)

\(\quad\because\,\,\omega:=\sqrt{\dfrac{g}{l}}\)

この(26)式を積分すると周期を求めることが出来る。積分範囲を4分の1周に相当する \(\ t=T/4\ \)とすると、右辺の積分範囲は\(\ \theta=0\sim\theta_0\ \)となるので、

\( \displaystyle\int_0^{\frac{T}{4}}dt=\dfrac{1}{\sqrt{2}\omega}\displaystyle\int_0^{\theta_0}\dfrac{d\theta}{\sqrt{\cos\theta-\cos\theta_0}}\quad\) (27)

\(\therefore\,\, T=4\dfrac{1}{\sqrt{2}\omega}\displaystyle\int_0^{\theta_0}\dfrac{d\theta}{\sqrt{\cos\theta-\cos\theta_0}}\quad\) (28)

この積分を行うために、半角公式を使って以下の変換を行う

\( \cos\theta=1-2\sin^2\frac{\theta}{2}\quad\cos\theta_0=1-2\sin^2\frac{\theta_0}{2}\)

ここで \(\,\,k:=\sin\frac{\theta_0}{2}\quad \sin\phi:=\sin\frac{\theta}{2}/k\,\,\)とすると

\( \cos\theta-\cos\theta_0=1-2\sin^2\frac{\theta}{2}-\left(1-2\sin^2\frac{\theta_0}{2}\right)\)

\(\quad=2\left(\sin^2\frac{\theta_0}{2}-\sin^2\frac{\theta}{2}\right)=2k^2\cos^2\phi\,\,\)となる

\(k\sin\phi=\sin\frac{\theta}{2}\,\,\)を両辺微分して\(\,\,k\cos\phi\,d\phi=\frac{1}{2}\cos\frac{\theta}{2}\,d\theta\)

\(d\theta=\dfrac{2k\cos\phi\,d\phi}{\cos\frac{\theta}{2}}=\dfrac{2k\cos\phi\,d\phi}{\sqrt{1-\sin^2\frac{\theta}{2}}}=\dfrac{2k\cos\phi\,d\phi}{\sqrt{1-k^2\sin^2\phi}}\)

なので

\(\dfrac{d\theta}{\sqrt{\cos\theta-\cos\theta_0}}=\dfrac{1}{\sqrt{2}k\cos\phi}\dfrac{2k\cos\phi\,d\phi}{\sqrt{1-k^2\sin^2\phi}}\)

\(\quad=\dfrac{\sqrt{2}\,d\phi}{\sqrt{1-k^2\sin^2\phi}}\,\,\)となり、第1種楕円積分の形になる。







振り子の計算(その1)


[1]運動方程式

振り子には、図のような力が働く。ここで 重力は\( \ W=mg\ \)で糸の張力は\(\ \ T=W\cos\theta\ \) である。

\(W\ \)と\(\ T\ \)の合力\(\ f\ \)の向きは図のように半径\(\ l\ \)の円周の接線方向となり、その大きさは

\(f=W\sin\theta=mg\sin\theta\) (1)

である。この合力\(\ f\ \)により、重りは円弧を描くように往復運動をする。ここで、運動を円軌道として考えるために、振り子の釣り合いの位置 O から、円弧に沿って\(\ s\ \)軸をとる。この合力\(\ f\ \)は重りを\(\ s\ \)軸の負の方向に運動させる力となるため、重りの運動方程式は

\( m\dfrac{d^2s}{dt^2}=-f=-mg\sin\theta\ \) (2)

すなわち

\( \dfrac{d^2s}{dt^2}=-g\sin\theta\ \) (3)

と表すことが出来る。 円弧の長さは \(\ s=l\ \theta\ \)で表せられ、2回微分は

\(\ \dfrac{d^2s}{dt^2}=l\dfrac{d^2\theta}{dt^2}\ \) (4)

となるので、運動方程式は重りの角度\(\ \theta\ \)に対して

\( \dfrac{d^2\theta}{dt^2}=-\dfrac{g}{l}\sin\theta\ \) (5)

と表すことが出来る。

[2]運動方程式の近似解

 (5)式の運動方程式は、三角関数を含んでいるため、このままでは階を求めることが難しい。但し、円弧の角度\(\ \theta\ \)が微少の場合、三角形の高さ\(\ x=\sin\theta\ \)は円弧の長さ\(\ s\ \)にほぼ等しくなり
\(\quad x\ \approx\ s\ \)とおけるため

\( \sin\theta=\dfrac{x}{l}\ \approx\ \dfrac{s}{l}=\dfrac{l\theta}{l}=\theta\ \) (6)

となり、運動方程式は

\( \dfrac{d^2\theta}{dt^2}=-\omega^2\theta\qquad \omega:=\sqrt{\dfrac{g}{l}}\quad\) (7)

と表すことが出来る。これは単振動で良く近似出来る。一般解は

\( \theta=A\sin\omega t+B\cos\omega t \) (8)

ここで、 \( t=0\ \)で\(\ \theta=\theta_0\ \)として、(8)式に代入すると

\( \theta_0=A\sin\omega\times 0+B\cos\omega\times 0=B\quad\therefore B=\theta_0\)

つぎに、(8)式を \(t\) で微分して、\(\ t=0\ \)で\(\ \dfrac{d\theta}{dt}=0\ \) とすると

\( \dfrac{d\theta}{dt}=A\omega\cos\omega t-B\omega\sin\omega t\)

\(\qquad =A\omega\cos\omega\times 0-B\omega\sin\omega\times 0=A\omega=0 \)

よって、\(\ A=0\ \)となり、(8)式は\(\quad\theta=\theta_0\cos\omega t\ \) (9)

と決定される。このように解が周期関数で表される振動を単振動といい、単振動で近似出来る振り子を単振り子といいます。

\(\ \omega=\sqrt{\cfrac{g}{l}}\ \) は角振動数 [rad/s] と呼ばれる。

角振動数\(\ \omega\ \)を 2\(\pi\) で割った値は、重りが1秒間に往復する回数を表し、振動数 \(\ f\ \)[Hz}と呼ばれています。

\( f=\dfrac{\omega}{2\pi}=\dfrac{1}{2\pi}\sqrt{\dfrac{g}{l}}\ \,\,\) Hz\(\quad\)(10)

重りが一往復するのに必要な時間は、周期 \(T\) [s] といい、振動数の逆数になる。

\(T=\dfrac{1}{f}=\dfrac{2\pi}{\omega}=2\pi\sqrt{\dfrac{l}{g}}\quad\)(11)